●はじめに:金は上がり続けている──でも「今から」って遅いの?
ここ10年で、金価格はじわじわと、しかし確実に上昇してきました。
2015年頃は1,000ドル台だった金は、2024年には一時2,400ドルを突破する場面も。
「もう高値圏じゃないか」
「今から買っても遅すぎるのでは?」
──そんな声もあります。
でも一方で、「金は永遠の安全資産、コツコツ積立こそ王道」という声も根強い。
今回は、過去10年の値動きの背景を押さえたうえで、**“今からの金積立”はどう考えるべきか?**を丁寧に紐解いていきます。
●金価格の10年:静かな高騰の足跡
1. 2010年代前半:低迷期
金は2011年の欧州債務危機後に一度ピークをつけたあと、2013年〜2015年にかけて大きく下落しました。
この時期、株高・ドル高・利上げ観測といったリスクオン相場が主流で、**安全資産である金は“出番なし”**と見なされていたのです。
2. 2019年〜2020年:復活の兆し
2019年、米中貿易摩擦や世界的な景気減速懸念が高まり、金は再び脚光を浴びます。
そして2020年、新型コロナウイルスのパンデミックが発生。世界がリスクオフに傾き、金は「最後の避難所」として急騰。2,000ドルを突破します。
3. 2021年〜現在:高値圏での持ち合いから上抜けへ
一時は金利上昇で軟調だったものの、インフレや地政学リスク(ロシア・ウクライナ戦争、中東情勢)、ドルの不安定さなどが影響し、2024年に再び金は史上最高値を更新しました。
●なぜ金は上がるのか?
金には、以下のような「価格を押し上げる構造的な要因」があります。
●① インフレヘッジとしての金
金は利息を生まない代わりに、貨幣価値が下がる局面(=インフレ)に強いという特徴があります。
世界的な物価上昇(特に米国や新興国)により、法定通貨よりも“希少で物理的な価値のある資産”が再評価されているのです。
●② ドルの信認と信用不安
金はドルの“代替資産”とも言われます。
近年は、米国の債務膨張や金融緩和のツケが表面化し、「ドルは本当に安全なのか?」という根源的な疑問が投資家の間で広がっています。
●③ 中央銀行の買い支え
2022年以降、各国の中央銀行(特に中国・ロシア・インドなど新興国)が金を大量に買い増ししています。これは、ドル依存からの脱却を意識した地政学的戦略でもあります。
●今から金に積立する人は、どう考えるべきか?
●1. 「高値だからやめる」は、投資判断として危うい
長期チャートを見れば、金の上昇は短期的なバブルというより構造的な流れであることがわかります。
もちろん短期的には調整局面もありますが、
「もう高いから買えない」という感情は、過去の株式やビットコインと同じで、後になって「やっぱり買っておけばよかった」となりやすい思考パターンです。
●2. 金は「積立」にもっとも向いている資産
金は、配当も利子も出さず、値動きも地味です。
しかし、だからこそ、「価格が読めない=タイミングが読めない」ので、分散的に・機械的に買い続けることに合理性がある資産なのです。
金を一括で買うより、**ドルコスト平均法による積立のほうが“精神的な負担が小さく、長く続けやすい”**というメリットもあります。
●3. 「値上がり益」よりも「守りの資産」として考える
金は、株のように企業の成長に賭ける資産ではなく、守りの資産です。
値上がり益を期待して投機的に買うと、すぐに失望するかもしれません。
それよりも、ポートフォリオの安定化、通貨リスクの分散、インフレ対策などの“保険的役割”を意識することが大切です。
●結論:「買い遅れた」と考えるより「持っていないリスク」に備える
金はこれまで、「上がってから話題になる」ことが繰り返されてきました。
そして、「話題になってから買おうとすると遅い」と言われる。
でも、それは逆です。
金は“遅い”資産です。だから、ゆっくり買えばいい。
「今から始めていいですか?」という問いに対して、最も合理的な答えは、
「少額から、定期的に、無理なく積み立てればいい」──ただ、それだけです。
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