インフレ時代に“現金を持つ”リスク

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──「預金が安全」という思い込みをデータで検証する

 物価が上がり続ける時代において、「現金を持つ」ことは本当に安全なのか。
 多くの人が「投資は怖いが、預金なら減らない」と考える。しかし、名目上は減らなくても、実質的な価値は確実に目減りしている
 それが、インフレの怖さである。


■ 「減らない」は錯覚にすぎない

 インフレとは、モノやサービスの価格が持続的に上昇する現象だ。
 100円で買えたペットボトル飲料が120円になる──それ自体は大したことがないように思えるが、これはお金の価値が下がったことを意味する。

 仮に年2%のインフレが続いた場合、10年後の1万円の購買力は約8,200円分にまで落ちる。
 つまり「1万円を預けておくだけ」で、実質的に1,800円を失っている計算になる。
 しかも、この損失は気づかないうちに進行する。


■ 預金金利が追いつかない現実

 日本の普通預金金利は、長年にわたり年0.001%前後にとどまっている。
 一方で、2024年以降、物価上昇率は2〜3%台で推移。
 インフレ率と金利の差(実質金利)がマイナスである限り、預金は「安全資産」ではなく「価値減少資産」となる。

 たとえば、1,000万円を現金で保有したまま20年経過すれば、
 年2%のインフレを仮定した場合、実質価値は約670万円に目減りする。
 この「ゆるやかな損失」は、暴落のように目立たないが、長期的には深刻だ。


■ 「目減り」の歴史的実例

 過去にも、インフレが現金を蝕んだ事例は少なくない。
 1970年代の米国では、オイルショックを背景に物価上昇率が10%を超えた。
 その結果、1970年に100ドルで買えたものが、1980年には240ドルを支払わなければ買えなくなった。
 現金を持ち続けた人は、資産の半分以上を失ったことになる。

 日本でも同様だ。
 1990年代のバブル崩壊以降、デフレを経験したことで「現金信仰」が根付いたが、
 2020年代に入り状況は逆転。物価は上昇基調にあり、もはや「銀行に置いておけば安心」とは言い難い時代になった。


■ 守りながら増やすという発想

 では、どうすればよいのか。
 結論は、「現金を減らしすぎず、現金“だけ”に依存しない」ことだ。
 生活費の半年〜1年分を現金で確保したうえで、残りをインフレに強い資産に振り向ける。
 具体的には、株式・インデックスファンド・REIT(不動産投資信託)など、現金価値が下がる局面で価格が上がりやすい資産が候補となる。

 特に、インデックス型の積立投資は「価格変動を味方にする」仕組みを持つ。
 インフレ時には企業の売上や利益も名目上増えるため、株価は長期的に上昇しやすい。
 これは、現金が減価していく中で、実質的に購買力を守る手段でもある。


■ 「安全」は何を意味するのか

 多くの人が「投資=危険、預金=安全」と考えるが、それは“値動きがあるかどうか”の違いに過ぎない。
 預金の価値も、静かに、しかし確実に動いている。
 名目上は1,000万円が1,000万円のままでも、その1,000万円で買えるものが減っていれば、それは「損失」だ。

 つまり、真の安全とは「資産の実質価値を守ること」である。
 そのためには、一部を成長資産に振り向ける勇気が必要になる。


■ お金を「眠らせない」時代へ

 インフレは、現金を“ゆっくり溶かす”。
 気づいたときには、貯めたはずの資産が目減りしている──そんな時代が、すでに始まっている。
 投資の目的は、資産を増やすだけではない。
 インフレという静かな敵から、自分の購買力を守ることでもある。

 「現金=安全」という思い込みを脱し、
 お金を“働かせる”時代へ。

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