近年、定年退職を迎えた夫婦が離婚する「熟年離婚」が増加傾向にあります。長年連れ添ったパートナーとの別れは、精神的な負担だけでなく、経済的な不安も伴います。特に、老後の生活を支える年金は、重要な問題です。
この記事では、熟年離婚における年金分割の基礎知識から、具体的な事例、注意点までを徹底解説します。
熟年離婚とは?
熟年離婚とは、一般的に結婚して20年以上経過した夫婦が、定年退職前後(50代~60代)に離婚することを指します。長年の夫婦生活の中で積み重なった不満や価値観の相違、子供の独立などが、熟年離婚の要因として挙げられます。
年金分割とは?
年金分割とは、離婚した夫婦が婚姻期間中に支払った厚生年金保険料の納付記録を分割し、それぞれの年金額に反映させる制度です。これにより、専業主婦(夫)やパート勤務などで収入が少なかった側も、離婚後の老後生活の安定を図ることができます。
年金分割の種類
年金分割には、以下の2種類があります。
- 合意分割
- 夫婦間の合意、または裁判所の決定により、分割割合(通常は50%)を決定します。
- 3号分割
- 2008年4月以降の婚姻期間において、第3号被保険者(専業主婦など)であった期間の保険料納付記録を、自動的に50%分割します。
年金分割の対象となる年金
年金分割の対象となるのは、以下の年金です。
- 厚生年金
- 共済年金
国民年金は対象外です。
年金分割の具体的な事例
例えば、夫が会社員として40年間厚生年金に加入し、妻が専業主婦だったとします。夫の厚生年金が月額20万円の場合、年金分割によって妻は月額10万円の厚生年金を受け取ることができます。
年金分割の手続き
年金分割の手続きは、以下の流れで行います。
- 情報提供請求
- 年金事務所に情報提供請求を行い、年金分割のための情報を取得します。
- 分割割合の合意
- 夫婦間で分割割合について合意します。合意できない場合は、裁判所に申し立てます。
- 年金分割の請求
- 年金事務所に年金分割の請求を行います。
年金分割の注意点
- 請求期限
- 年金分割の請求期限は、原則として離婚成立後2年以内です。
- 分割割合
- 分割割合は、原則として50%ですが、夫婦間の合意によって変更することも可能です。
- 税金
- 分割によって受け取る年金は、雑所得として課税対象となります。
熟年離婚における年金以外の問題
熟年離婚では、年金以外にも以下のような問題が発生する可能性があります。
- 財産分与
- 婚姻期間中に夫婦で築いた財産を分けます。
- 慰謝料
- 離婚原因を作った側が、精神的苦痛を与えた相手に支払います。
- 住居
- 離婚後の住居を確保する必要があります。
まとめ
熟年離婚は、人生の大きな転機です。後悔しないためには、年金分割だけでなく、財産分与や慰謝料など、様々な問題を考慮する必要があります。専門家のサポートを受けながら、慎重に検討することをおすすめします。
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