――ETF資金流入と中央銀行の買いが支え
2025年10月7日、米投資銀行大手ゴールドマン・サックスは、2026年12月の金価格予想を1オンス=4900ドルとし、従来の4300ドルから引き上げた。欧米の上場投資信託(ETF)への資金流入が堅調であり、各国の中央銀行による金購入が継続するとの見方を示した。
金現物価格は同日、一時3977.19ドルを付け、過去最高値を更新。ゴールドマンは「民間部門の投資が比較的小規模な金市場に流入することで、ETF保有高が当社の金利モデルを上回る可能性がある」と指摘し、見通しに対するリスクは「依然として上方に偏っている」とした。
ETFと中央銀行、上昇を支える二つの柱
金相場を支えているのは、主に欧米のETF市場と各国の中央銀行だ。
ETF(上場投資信託)は、株式のように取引できる投資信託で、個人や機関投資家が金価格に連動する形で投資できる。足元では「安全資産」としての金需要が高まり、米国や欧州の投資家を中心に金ETFへの資金流入が続いている。
一方、各国の中央銀行も金の購入を積極化している。特に中国やロシアなど新興国では、外貨準備に占めるドル資産の比率を下げ、代替として金を保有する動きが顕著だ。地政学リスクの高まりや、国際金融システムにおけるドル支配への警戒感が背景にある。
「小さな市場」に流れ込む大きな資金
金市場は、株式市場や債券市場に比べると規模が小さい。そのため、ETFや中央銀行の買いが継続するだけでも、価格が大きく動きやすい構造を持つ。
ゴールドマンの新たな予測は、金価格が「高値圏」で推移する可能性を示唆している。金価格が1オンス=4900ドルになった場合、為替レートを1ドル=150円とすれば、1オンス(約31.1グラム)は約73万円、つまり1グラムあたり約2万3千円に達する計算となる。
投資家が注視すべきポイント
金は一般的に、インフレや金融不安、地政学的リスクが高まる局面で買われやすい。株式や通貨の変動が大きくなると、利息がつかない代わりに「価値が下がりにくい」金への需要が強まる傾向がある。
もっとも、金利が高止まりする局面では、利回りを生まない金は相対的に不利になることもある。今後は、世界的な金融緩和のペースや米国金利の動向が、金相場を左右する重要な要素となるだろう。
金は「不安の鏡」
金価格の上昇は、単に投資対象としての魅力が高まっているだけではない。
それは同時に、世界が依然として「不安定な時代」を生きていることの裏返しでもある。
インフレ、地政学リスク、為替の揺れ――こうした要素が重なる中で、投資家や各国の政府は「価値を保つもの」への信頼を再び強めている。
金は、経済の不安や通貨の信用低下を映し出す鏡のような存在だ。
その輝きが増すということは、世界がリスクを感じている証左でもある。
「静かに輝く守りの資産」として、金の動きは今後も市場参加者の注目を集め続けそうだ。


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