1. 繰り上げ受給の問題点
繰り上げ受給は、60歳から受給開始を早める制度ですが、デメリットもあります。
- 年金額が減額される
→ 1カ月繰り上げるごとに 0.4%減額 される。最大で 24%減額(60歳開始の場合)。 - 生涯にわたって減額が続く
→ 一度減額されると、ずっとその金額のまま。長生きするほど不利になる。 - 障害年金・遺族年金との兼ね合い
→ 将来、障害年金を受給できる状態になった場合、繰り上げ受給していると影響を受ける可能性がある。 - 働いていると不利になることも
→ 一定の収入があると年金の一部が支給停止になる可能性あり。 - 税金や社会保険料の影響
→ 受給額が減るため、結果的に社会保険料や税の負担が相対的に増えることがある。
2. 繰り下げ受給の問題点
繰り下げ受給は、受給開始を遅らせることで増額される仕組みですが、デメリットもあります。
- 年金を受け取る前に亡くなる可能性
→ もし受給前に亡くなると、繰り下げた分の年金を受け取れず損する。 - 年金を受け取るまでの生活資金が必要
→ 働いていない場合、貯蓄を切り崩して生活する必要がある。 - 加給年金がもらえなくなる場合がある
→ 65歳以降に配偶者がいると加算される「加給年金」は、繰り下げるとその分受給できる期間が短くなる。 - 健康リスクに影響を受ける
→ 70歳や75歳まで繰り下げた場合、体調が悪くなって楽しめる時間が少なくなるかもしれない。 - 税金の影響
→ 年金額が増えるため、所得税や住民税が上がる可能性あり。
まとめ
✅ 繰り上げ受給 は「早くもらえるが、一生減額される」デメリットがある。
✅ 繰り下げ受給 は「増額されるが、長生きしないと損をするリスクがある」。
どちらが良いかは、寿命、健康、貯蓄、生活スタイル などを総合的に考えて決めることが大事!
繰り上げ受給の損益分岐点とは?
年金の繰り上げ受給は、本来の65歳より早く年金をもらう代わりに、生涯にわたって減額 される制度です。
このとき、「何歳まで生きれば、65歳から受給するよりも損になるのか?」 という年齢が 損益分岐点 です。
具体的な計算例(2025年現在の年金制度を基に)
前提条件
・65歳からの年金額:年間100万円(※簡単な数字で計算)
・繰り上げ受給の減額率:1カ月あたり0.4%(1年で4.8%)
・60歳で繰り上げ受給した場合:5年 × 4.8% = 24%減額 → 年間76万円
ケース①:60歳で繰り上げ受給した場合
- 60歳から76万円の年金を受け取る
- 65歳受給の人は、それまで年金を受け取れないが、66歳以降は年間100万円を受け取れる
- 60歳から受給した人は、65歳までに76万円 × 5年 = 380万円を受け取る
- では、65歳から受給する人は何歳で逆転するのか?
損益分岐点を計算
66歳以降の差額 → 100万円 − 76万円 = 24万円(年間の差)
→ 受け取った 380万円 を、この 年間24万円の差 で埋めるのにかかる年数は?
380万円 ÷ 24万円 ≈ 15.83年(約16年)
つまり、81歳(65歳 + 16年)より長生きすると、繰り上げたほうが損になる!
まとめ
✅ 81歳より早く亡くなるなら、繰り上げ受給のほうが得
✅ 81歳以上生きるなら、65歳受給のほうが得
日本人の平均寿命(男性:約81歳、女性:約87歳)を考えると、長生きリスクを考えて慎重に判断する必要あり!
特例的な繰り下げみなし増額制度とは?
この制度は、65歳以降に年金の受給手続きをしなかった人が、結果的に繰り下げ受給を選択した形になる特例 です。
制度のポイント
- 本来65歳で受給開始できるが、手続きをせずに放置していた場合でも、結果的に繰り下げ受給の扱いになる
- 手続きをした時点で、経過した期間に応じた増額率が適用される
- ただし、75歳を超えると強制的に受給開始となる
具体例
たとえば、65歳で年金の手続きを忘れていて、70歳になってから申請した場合:
✅ 通常の繰り下げ受給と同じく 42%増額(5年 × 8.4% = 42%)された状態で受給できる!
つまり、うっかり申請しなくても、自動的に繰り下げ扱いとなり、増額された年金を受け取れる仕組み ということです。
注意点
- 75歳までに手続きしないと自動的に受給開始となる(75歳以降の繰り下げは不可)
- 繰り下げ加算が適用されるが、過去の未受給分はさかのぼってもらえない(その期間分の年金は受け取れない)
まとめ
✅ 65歳以降に年金の手続きを忘れていても、後で申請すれば繰り下げ扱いとなり増額される
✅ ただし、75歳までに申請しないと、強制的に受給開始となる
✅ 未受給分の年金はさかのぼって支給されないため、長期間手続きしないと損をする可能性もある
繰り下げを考える場合は、この特例も活用しつつ、自分に合ったタイミングで手続きするのが重要!
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